ラジコン&自転車時々インコ

趣味のラジコン(グライダー・ヨット)と自転車、それと同居のインコの話を徒然に日記書き

八朔の雪-みをつくし料理帖-

私は山本周五郎の作品の中では『さぶ』が大好きなのだが、角川春樹氏が『さぶ』以来の感動!、十年に一冊の傑作に涙が止まらなかった、と表現する「八朔の雪」を読み始めた。作者の高田郁さんは初めて。


女性料理人「澪」が主人公。山本一力さんの「あかね雲」のテーマでもあったが、江戸と大阪の味の嗜好違いが小説の面白さを作り出している。


蕎麦屋だった店を任され、調理場で腕を振るう澪は、故郷の大坂で、少女の頃に水害で両親を失い、天涯孤独の身であった。大阪と江戸の味の違いに戸惑いながらも、天性の味覚と負けん気で、日々研鑽を重ねる澪。


料理だけが自分の仕合わせへの道筋と定めた澪の奮闘と、それを囲む人々の人情が織りなす、涙と面白さが同居する連作時代小説が出てきたような気がする。


ほろほろ泣けて、しかも彼女が工夫して作る料理が食べたくなる小説です。