庶民が観光旅行を楽しめるようになったのは江戸時代に入ってからだそうで、当時の民衆は観光旅行を禁じられていたのだが、参詣・参宮のための信仰上の旅行は許されていたようだ。
そのため、伊勢参宮の名目を借りて観光旅行に出かけていて、伊勢参り、大山参り、富士山参りの観光旅行が盛んだった。
それらの人を連れて歩く、いわばツアコンが御師(おんし)と言う仕事。
奉納船を携え伊勢参りに向かう、土佐の荒くれ鯨漁師たちを案内する御師。
安政の大地震の傷も癒えぬ江戸からは、豪商・伊勢屋の一行が船で伊勢を目指し、こちらも御師が水先案内。
庶民の夢の旅を先導する御師の見識と器量が人の縁を豊かに結んでゆくそんな小説。
御師の活躍を描く熱く爽快な傑作時代長篇。