宮本輝さんの「流転の海」を読み始めた。
この作品は5部まである、大長編小説だ。終戦の混乱が続く昭和22年の大阪からこの小説は始まる。
戦争で、裸一貫になった松坂熊吾は、大阪の闇市で松坂商会の再起をはかる。松坂熊吾は50歳で理不尽で我儘で好色な男だが、人を引き付ける不思議な魅力を持っている。
50歳になった彼は、折も折、妻の房江に、諦めていた子宝が授かった。
「お前が20歳になるまでは絶対に死なん」と自分がこの世に生まれた役目こそ自分の子を育てることだと、熊吾は子供の伸仁を溺愛する。
幾多の波瀾のなか、父と子、母と子の関係を軸に、個性的な人間たちの有為転変を力強い筆致で描いている。
筆者の宮本さんも昭和22年生まれなので、子供の伸仁は作者本人か・・・?。骨太な作品で面白い。